畳のサイズと設計モジュール
一般の方がつかう畳のサイズで言うときの大きさ「京間」「関西間」「中京間」「関東間」、そして私たち設計者が寸法の基準(モジュール)を言うときに使う「910mm」 「1m」モジュール。 なにがどうなっているのでしょうか。
畳の大きさの基準について
そもそも「京間」を「狭間」と思い違いしている人も居ますが・・・・。 「京間」が一番大きいのです。 畳の長辺と短辺の関係は、「京間」「関西間」は1910×955。「中京間」は1820×910。「関東間」は1758×879.という寸法です。 つまり畳の大きさは、最大の京間は1.824㎡。最小の関東間は1.545㎡。実に関東間の1畳は京間の84.7%の大きさしかありません。つまり単純に8畳間と言ったときに、関東間の8畳は実面積で京間の7畳より小さいということです。
設計モジュールについて
尺が基本の910mmモジュール 戦後日本の建築は基本として尺(303mm)を基本とし、6尺が一間(1820mm)という単位が大元になったため、柱間隔で一間と半間の組み合わせグリッドで構成することが標準となってきました。 そうすると、2間間隔で柱寸が3寸105mmなら、柱と柱の有効間隔3640-91=3549そこから畳よせの40mmぐらいを差し引いて、2で割ると1754mmという「関東間」の畳長辺の長さが得られるというわけです。 そして、昭和50年以降の規格住宅の多くがこのモジュールで設計されたため、石膏ボード、合板のサイズ、サッシメーカーやクロスメーカーの規格も統一され、工場量産規格として普及、大量生産によりコストも抑えられてきました。
バリアフリーと柱寸法の大型化からの1mモジュール
近年、高齢化に対応できる住環境整備の観点から、通路や廊下の有効幅を800mm以上確保することが推奨されるようになりました。 また、阪神淡路大震災の反省から、木造構造柱に105mm角、120mm角を使用し、建築基準法の規定強度を超える耐震強度を確保しようという構造計画が主流となってきたことも、1mモジュールが採用される大きな理由となっています。 たとえば、910mmの柱間隔で120mmの柱が両側にあれば、建具枠(両側で40mm) と扉厚さ(30mm)を差し引けば、720mmの有効幅しか確保できません。それを、1mの柱間隔にすることで、810mmの有効幅としようとするものです。
畳から考えると何が問題でしょう
では、柱や壁の中心ではなく、畳の大きさの基準を完全に守って設計した場合にどのような問題が生じるのでしょうか。 畳の大きさ、たとえば関西間の畳寸法を全て完全に守ろうとした場合、8畳間の内のり有効は3640×3640mmに畳寄せを考慮し、3680×3680mm。そこに、120mm角の柱がつく壁は60mm、105角の柱を使う壁は52.5mmの位置に壁の中心=壁芯があることになります。 これでは、構造計算から柱の大きさが変われば、面積の計算根拠となる壁芯もそのたびに増減し、なにより、建設現場での間違いの元になってしまうでしょう。
モジュールの組み合わせで適所を広げることも
基本は材料コストと総面積の抑制を考えて910mmを採用し、主となる廊下の部分にのみ1mモジュールとすることで、コスト、バリアフリー、耐震強化の問題を同時に解決することも可能です。 スペースプロでは、「江井ヶ島の家」「明石太寺の二世帯住宅」において、910mmと1mモジュールを効果的な使い分を行い、施主様にご満足いただけるコストバランスの良い、快適、安全な住宅を設計しております。 ハウスメーカー規格住宅とは異なる住宅。デザインだけではなく、コストや機能面でも設計の力量と豊富な経験が活かされています。